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「資本主義が人類最高の発明である」要約・感想
ヨハン・ノルベリ『資本主義が人類最高の発明である』の読書感想文。「脱成長」「トップ1%の搾取」「格差は悪」という通説を、豊富なデータで検証する世界的話題作を21歳が読んだ感想。
執筆・検証:ぜん/編集方針
「資本主義は格差を生む」「先進国が途上国から搾取している」「もう脱成長すべきだ」。こうした通説をデータで検証していく本です。著者はスウェーデンの思想家ヨハン・ノルベリ。
主張は一言でいうと、今のところ、資本主義に勝る仕組みは見つかっていない。完璧だから最高なのではなく、他よりましだから最高、という立場です。
アパルトヘイトに抗議し続けたのはバス会社だった
本書で紹介されている例で一番印象に残ったのがこれです。
アパルトヘイト下の南アフリカで、黒人はバスに乗ってはいけないという法律が決まった時、長く抗議を続けたのは人権団体ではなくバス会社だったという話です。
理由は単純で、乗客が減るからです。差別の法律は、バス会社にとっては売上が消えることを意味しました。だから正義感からではなく、商売として反対し続けた。
ここが資本主義の面白いところだと思いました。善意がなくても、利益を追うだけで差別に抵抗する力が働く。人の心に期待しなくても仕組みとして作用する、というのは強いです。
麻薬の密売人ですら、効率のいいエネルギーを選ぶ
もう一つ印象に残ったのが、麻薬の密売人のような「悪い人たち」でも、利益を追求するために効率のいいエネルギーを使うという話です。
思想も倫理も関係なく、コストが安くて効率がいいほうを選ぶ。それが結果として資源の無駄を減らす方向に働く。
この2つの例から見えてくるのは、個人が良い人かどうかに関係なく、利益を追求すること自体が結果的に社会の役に立つ場面があるということです。善人を増やすより仕組みを整えるほうが速い、という話でもあります。
「安い人件費で搾取している」への反論
よくある批判に、先進国の企業が人件費の安い国を搾取している、というものがあります。本書はこれにも反論します。
実際には企業はその国に道路や電柱といったインフラを整備する側にまわっていることが多く、しかも支払っている給料は、その国の相場より高い水準であることが多い、という指摘です。
もちろん労働環境の問題が無いという話ではありません。ただ「進出しないほうがその国のためになるのか」と問われると、そう単純ではない。批判する時も比較対象を持って考えるべきだ、という筋道は納得感がありました。
富む者がさらに富む、しかし長期では平均化していく
格差についての整理も分かりやすかったです。
資本主義では、富んでいる者がさらに富みます。そこは本書も否定していません。ただ同時に、長期で見ると世界は平均化していくとも言います。
一番分かりやすいのが人件費です。安かった国の賃金は、仕事が集まるにつれて上がっていく。上がれば企業は次の国に移り、そこでも同じことが起きる。短期の断面では格差に見えても、長い時間で見ると水準が押し上げられていく、という見方です。
読んで変わったこと:稼ぐことはいいことだと再認識できた
自分がこの本から受け取った一番大きいものは、お金を稼ぐのはいいことだ、と改めて思えたことでした。
21歳で事業をやっていると、金儲けという言葉に後ろめたさを感じる瞬間が普通にあります。世の中の空気として、稼ぐことをどこか下品に扱う感覚があるからです。
でもこの本の立場だと、利益を追うこと自体が社会の役に立ちうる。バス会社が商売として差別に反対したように、稼ぐという動機は思想よりも安定して働きます。自分の事業に対する引け目が減ったのは、実用的な効果でした。
「資本主義と、生きていく」と両方読んで感じたこと
自分は資本主義と、生きていく(Amazon)という、ほぼ正反対の立場の本も読んでいます。片方は資本主義を人類最高の発明と呼び、もう片方は資本主義が生む「しんどさ」を扱います。
両方読んで思ったのは、どちらが正しいという話ではなく、見ている層が違うということでした。
ノルベリの本は社会全体の話をしています。貧困率、寿命、識字率。集団で見れば資本主義は勝ってきた。一方でもう一冊は、その仕組みの中にいる個人の内面の話をしています。社会として最善の仕組みであることと、その中の一人ひとりが消耗しないことは、まったく別の問題です。
両方読むと、資本主義を全肯定も全否定もしなくて済むようになります。仕組みとしては支持する、でも自分の心はすり減らさないように扱う。この距離感が今のところ自分の結論です。
こんな人におすすめ
- ✅ 「格差」「脱成長」を雰囲気で語ることに違和感がある人
- ✅ お金を稼ぐことに、どこか後ろめたさを感じている人
- ✅ データと事例で経済を捉えたい人。FACTFULNESS(Amazon)が面白かった人
逆に、向かないかもしれない人
資本主義の負の側面、たとえば環境問題や不平等を深く掘りたい人には、擁護寄りに感じられると思います。著者の立場は最初からはっきりしているので、中立な検証を期待すると違和感が出ます。
そこは欠点というより性格です。反対側の本と並べて読むことを前提にすると、かえって使いやすい一冊になります。
まとめ
主張は強く、賛否も分かれる本です。ただ「自分の常識をデータと事例で疑う」訓練としてはよくできています。
バス会社の話も、密売人の話も、共通しているのは「善意に頼らない仕組みの強さ」でした。稼ぐことへの後ろめたさが減ったという意味で、自分にとっては実用的な一冊でした。
この本と合わせて読むなら
同じ「データで世界を見る」スタンスのFACTFULNESSと相性が抜群です。
反対側の視点がほしいなら資本主義と、生きていく、お金と幸福の関係を考えたいなら幸福の「資本」論(Amazon)へ。
よくある質問
経済の知識がなくても読めますか?
読めます。数式や専門用語より、歴史のエピソードとデータが中心なので、経済の入門としても読めます。
偏った内容ではないですか?
資本主義を擁護する立場は最初から明確です。中立の検証ではないので、反対の立場の本と合わせて読むとバランスが取れます。
投資をする人にとって役立ちますか?
役立ちます。長期で見れば世界の生産性は上がってきたという大局観は、長期・積立の投資を続けるうえでの支えになります。
資本主義に問題はないという主張ですか?
違います。問題はあるが他の仕組みよりましだ、という立場です。批判するならデータと比較対象を持って批判しよう、という本になります。
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