
「営業」という言葉に、少し後ろめたいイメージを持っている人は多いと思います。ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)も同じで、カリキュラムに「営業」の授業はほとんど存在しません。
この本は、その矛盾を正面から問う一冊です。著者のフィリップ・デルヴス・ブロートンはHBSのMBA卒業生でありながら、「なぜ学校は営業を教えないのか」という疑問を抱き続けた。世界最高峰のビジネス教育が避け続ける「営業」の本質を、取材と自らの経験で解き明かしています。
結論:なぜHBSでは営業を教えないのか
本書の答えは、営業がエリート教育では低俗な仕事と見られ、個人差が大きく理論として体系化しにくいからです。しかし著者は、顧客の信頼を得て「売る力」こそ、あらゆるビジネスを成立させる本質だと主張します。
なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか → Amazon
「営業」がバカにされる理由
HBSをはじめとするエリートビジネス教育が営業を軽視する理由は、主にふたつです。
- 営業は「低俗」だというイメージ:相手を説得・誘導するネガティブな行為と捉えられがち
- 体系化が難しい:財務やマーケティングと違い、数式や理論に落とし込みにくい
しかし著者はこう反論します。「あらゆるビジネスは、最終的には誰かが誰かに何かを売ることで成立する。それを教えないのは、エンジンの作り方を教えないで車の設計を学ばせるようなものだ」
本当に優れた営業とは何か
著者が世界中の「凄腕セールスパーソン」を取材してわかったことは、彼らに共通する意外な特徴でした。
- 押し付けではなく、相手の課題を深く聞くことに時間をかける
- 商品を売るのではなく、相手の未来を変えることを売っている
- 断られることを恐れず、「ノー」から学んでいる
一流の営業は、お世辞を並べたり強引に押したりしない。むしろ相手の言葉を引き出す「聞く力」が圧倒的に高い。これは大学院でケーススタディを読み込んでいるだけでは、なかなか身につかないスキルです。
営業は「人生最強のスキル」である
本書の最も重要なメッセージはここにあります。
「自分のアイデアを人に伝え、動かす力。これは起業家にも、サラリーマンにも、政治家にも、親にも必要なスキルだ。つまり全員が営業をしている。」
就職の面接も、社内でのプレゼンも、友人への提案も、本質的にはすべて「営業」です。にもかかわらず、それを正面から学ぶ機会はほとんどない。
一番驚いたこと:トップセールスは、全員やり方が違う
この本を読んで最も意外だったのは、「売れる営業マンに共通の“型”は存在しない」という指摘でした。
世の中には数え切れないほどのトップセールスがいますが、その手法は本当にバラバラです。理詰めで論理的に攻める人もいれば、とにかく雑談で懐に入る人、寡黙だけど誠実さで信頼される人もいる。正解が一つに定まらないのが営業の世界でした。
ここに「なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか」という問いの答えがあります。ビジネススクールは、誰がやっても同じ結果になる再現性のある理論を教える場所です。財務・会計・マーケティングには型がある。でも営業は、話し方・間の取り方・関係の築き方が人によって全く異なり、体系化して「これが正解」と教えることができない。だから教えない——という話でした。
BANSOUで対面営業をしている自分に刺さった理由
自分は今、営業代行のBANSOUで税理士事務所へ対面営業をしています。始めたばかりで実績はまだこれからですが、この「全員やり方が違う」という指摘には正直、救われました。
営業を始める前は「正しい営業のやり方」を探して、トークスクリプトや型を必死に覚えようとしていました。でもこの本を読んで、「万人共通の正解を探すのではなく、自分に合ったスタイルを見つけて磨けばいい」と考えが変わりました。口下手でも、自分の誠実さや準備の丁寧さを武器にすればいい。型を暗記することより、目の前の相手に合わせて動くことのほうが大事だと気づけたのは大きな収穫でした。







